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ボリス・グレベンシコフ/ラジオ・サイレンス

ワールドカップ・サッカー・ロシア大会でにぎわってますが、それとはあくまでも無関係で、本日はこちらのご紹介です。

ボリス・グレベンシコフ/ラジオ・サイレンス  (01)

ボリス・グレベンシコフ/ラジオ・サイレンス

ロシアのボブ・ディランとも言われる、ロシアン・ロックの第一人者であり、開拓者です。






このCDが発売されたのは、いまから29年前の1989年。

この年は世界はもちろん日本も大きく様変わりした年でした。

東欧の共産主義政権が次々と崩壊し、東西ベルリンを隔てていた“壁”も撤去され、米ソを頂点とする東西陣営による“冷戦が”終結した、記念すべき年でした。

わが国でも天皇が崩御し、それに伴い新元号へ移行(昭和から平成に改元)。美空ひばりや手塚治虫など、時代を作った人々が相次いで亡くなる一方で、バブル景気を謳歌するなど、古い時代への惜別と新しい時代への期待に膨らむ、激動の一年でした。


このCDはそんな時代に発売された、まさにこの時代を象徴するような一枚でした。


その前に、ボリス・グレベンシコフについておさらいしておきましょう。


1953年に旧ソビエト連のレニングラード(現ロシア連邦サンクト・ペテルブルク)に生まれた彼は、1972年にロックバンド“アクアリウム”を結成。本格的な音楽活動を始めます。

ボリス、そしてアクアリウムが当時のソ連社会で革新的だったことは、ロシアの魂を、当時西側で若者たちの心を鷲掴みにした“ロック音楽”に乗せて歌った事でした。

それが故、彼らは当然のようにソ連の若者たちから強く支持されるのですが、ソビエト共産党はそれを認めることはなく、ボリスたちから作品の発表、そして大衆の前で演奏する機会を奪ってしまいます。

もっともこのような発禁措置をとられたのは、彼らだけではなく、そしてソ連をはじめとする共産圏だけでもありませんでした。

わが国でもこの時代、ロック音楽は“不良の音楽”として長らく白い目で見られ、活動を妨害されるなんてことも決して少なくありませんでした。

今にして思えば不思議な話ですが、わが国では旧共産圏のような公権力からの迫害こそありませんでしたが、“世間”という無形の圧力が若者たちを抑圧していた時代があったんですね。(いまはどうでしょうか?)


閑話休題。


公で活動することを許されない日々が続くボリスたちですが、それにめげることなく自費で機材をかき集め、レコーディングを続けます。

若者たちもそんな彼らを変わらず指示し続け、どこから入手したのか、ボリス、そしてアクアリウムの音源は、カセットテープに何度もダビングされ、多くの人に共有されていきます。

またロシアの公に認められたミュージシャンたちからも、彼らを評価する声が高まるようになり、徐々にボリスたち、“アクアリウムのロック音楽”が認められるようになってきます。

そして1985年、ソ連は大きな転換期を迎えます。“冷戦”を終結させた男:ミハイル・ゴルバチョフがソビエト共産党書記長に就任。長らく続く停滞を打破するためにペレストロイカ(改革)、そしてグラスノスチ(情報公開)をはじめます。閉塞したソビエト社会が大きく変わり始めるのです。


ゴルバチョフが政権トップに就いてから、抑圧されていた“自由”がソビエト社会にもたらされるようになります。いままではご法度だった政権批判はもちろん、“ブルジョア的かつ退廃的”として制限されていた西側の情報・文化がソビエト社会に大量にもたらされるようになります。

その一方で、西側にはあまりよく伝わってこなかったソ連市民の声、実態が届き始めるようになります。その多くは朗報とは遠い内容のものでしたが、そんな中でもボリスたちが創りあげた音楽のような、西側の人の心を揺さぶる豊かな文化も紹介されるようになったのです。

だいぶ前置きが長くなりましたが、本日紹介するボリス・グレベンシコフの西側デビュー作「ラジオ・サイレンス」は、そんな時勢の中で産み出された、東西両陣営のミュージシャンによる和解と融和、そして相互理解の賜物だったのです。


ボリス・グレベンシコフ/ラジオ・サイレンス (02)


このアルバムはボリス・グレベンシコフ本人はもちろん、アクアリウムのメンバーの他、ユーリズミックスのデイブ・スチュワート(プロデュースも兼任)、アニー・レノックス、クリッシー・ハインド、レイ・クーパー、etc、多くの西側ミュージシャンが参加した“東西合作”でもあります。そのためか、(西側------特にアメリカのリスナー向けのためか)、全12曲中10曲が英語(但し、#9の「アーサー王の死」は古語)で、ロシア語で歌われているのは#7「ヤング・ライオン(Young Lions / Молодые Львы)」と#12「チャイナ(China / Китаи)」の2曲のみという、少々残念な内容。

日本版のライナーはボリス、そしてアクアリウムを詳しく解説していて、たいへん参考になるのですが、前述2曲のロシア語歌詞は掲載されておらず、(おそらく米国版も同様と思われる)、ロシアンミュージックファンにとっては不満が残るかもしれません。(英訳歌詞とそれの日本語訳詞は掲載されています)。


前述したとおり、西側の著名なミュージシャンもこぞって参加しているだけあって、たいへんクオリティの高いアルバムではあるのですが、ボリスの訛りのある英語と、いまひとつ垢抜けていない曲調のためか、野暮ったさを感じるかもしれません。


そこがまたいい味なのですが、残念ながら日本では全く売れなかったようです(哀)。


なんでも返品の山だったようで……、なんでかなぁ……??(苦笑)。


東西の融和と冷戦の終結に至るまでの激動も、日本人にとっては遠い海の向こうの出来事と感じられたのか、はたまたバブル華やかなりしご時勢に不似合いだったのでしょうか?


とはいえ米国ではビルボード・チャート7位と、それなりにヒットしたようで、ロシアンロックの存在感は充分に示せたようです。


その後のボリスたちですが、アクアリウムは解散と再結成を繰り返しながら、現在も活動中。ボリス本人もすっかり大御所ですが、今でも精力的に活動しているようですね。

近影を見ると、蓄えた髭の中に白、髪が見えるあたりに年齢を感じさせますが、この人、若いときから結構な美男子だったので(笑)、いまはいぶし銀の渋い漢といった風情でしょうか。


当アルバムは廃盤なって久しく、手に入れることは難しいでしょう。ですが幸運にも入手できる機会に恵まれたならば、激動の時代に生きた若者たちの、自由を求める心の声に思いを寄せながら、ぜひ耳を傾けていただきたいと思います。


ラジオから流れる魂の叫びを。


(文中敬称略。この記事はCDのライナーノーツおよび英語版Wikipedia等を参考に執筆しました)


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